『法定後見』の利用まで
制度の要旨 ~利用までのながれ(1~3)
~サービスの内容と料金
*制度の要旨*
『法定後見制度』は,成年後見制度の中心となるもので,本人の判断能力が不十分になった場合に,親族などの申立てにより,家庭裁判所が審判で後見人,保佐人または補助人と呼ばれる「支援者」を選任して開始する,本人の身上保護(:安全で安心な暮らしをまもる)と判断能力の補填(:法律上の効果を持たせる)を目的として民法に規定された制度です。
法定後見は,本人の判断能力の程度によって次の3類型に分類されます。
それぞれ本人の判断能力が,
●常態として欠く状況にある :『後見』
⇒ 後見人が選任され,本人を代理するほか,本人の行った法律行為を取消しまたは追認し,
本人の意思を尊重して身上保護に当たることを任務とします。
●著しく不十分である :『保佐』
⇒ 保佐人が選任され,本人の行う一定の法律行為への同意,取消しまたは追認することを任務とします。
また審判により,同意等の範囲の拡大や特定の法律行為について代理権が付与されることがあります。
●不十分である :『補助』
⇒ 補助人が選任され,本人の行う法律行為のうち,審判で認められたものについて代理,同意,取消し
または追認することを任務とします。
よりくわしい説明をご覧になりたい方は,こちらをどうぞ (ご本人のお住まいが岩手県か宮城県の場合)↷
→→→ 『成年後見・保佐・補助開始の申立てをされる方へ』【盛岡家庭裁判所】 ←←←
→→→ 『成年後見制度の利用に関する手続案内』【仙台家庭裁判所後見センター】 ←←←
*利用までのながれ(1/3)*
≫≫≫ 成年後見人等の『候補者さがし』,家庭裁判所への『申立て準備』~『申立て』
ご本人の判断能力に異変を感じ,成年後見制度の存在を知ってから,最初にすることは,成年後見人の『候補者さがし』と家庭裁判所への後見等開始の『申立て準備』です。
成年後見人等の『候補者さがし』では,ご本人やご家族がなって欲しいと考える人が一番に思えますが,法律や制度運用上の理由から「成年後見人になれない人」が初めから分かっていることもあるので,専門家に聞くなどして,家庭裁判所が認めてくれそうな人を「候補者」として申立書に記載することをお勧めいたします。
仮に「候補者に誰も見当たらない」としても,後記する団体にあっせんしてもらい,実際に面談するなどして「どんな人が,何を,どれくらい,どのようにしてくれるか」を確認しておくことを強くお勧めいたします。
『申立て準備』では,成年後見制度がどういうものか知るための「学習」と,家庭裁判所へ提出する「書類の収集」を行います。「学習」としては,知識の習得のほかに,審判の前後で生じるご本人への制限や周囲への影響を予測・理解し,「書類の収集」としては,「単に集めるもの」と「人に頼むもの」に分けて進めて行きます。
なお,以下のサイトを参照しながら,ご親族の方(ご本人から四親等内に限ります)などで申立書を作成することができます。
「手続き案内」や「書類の様式」はこちらをご利用になれます。↷
→→→ 『成年後見・保佐・補助開始の申立てをされる方へ』【盛岡家庭裁判所】 ←←←
→→→ 『成年後見制度の利用に関する手続案内』【仙台家庭裁判所後見センター】 ←←←
また,準備の途上で,さまざまな相談ごとが生じた場合,弊所行政書士はもちろん,つぎの団体が窓口を設けておりましたので,ご利用ください。
◆岩手県行政書士会 :市町村や都道府県機関への手続きに関するご相談
◆(福)岩手県社会福祉協議会 :暮らしの困りごと,福祉サービスの利用など地域福祉全般に関するご相談
家庭裁判所へ提出する申立て書類の作成や手続きの相談については,本人の住所が岩手県の場合,つぎの団体がご利用になれます。また,家庭裁判所の職員(裁判所書記官など)から直接教えてもらうこともできます。
なお,弁護士・司法書士以外の資格者(行政書士を含む)が手続きに関わることは法律で禁じられております。
◇岩手弁護士会 :弁護士は代理人として,すべての手続きを行うことができます。
◇岩手県司法書士会 :司法書士は,家庭裁判所に提出する書類の作成することができます。
◇盛岡地方・家庭裁判所 :まずは最寄りの家庭裁判所からお調べください。
申立書の用意ができたら,家庭裁判所に提出(『申立て』)して,審理の結果を待ちます。
*利用までのながれ(2/3)*
≫≫≫ 成年後見人等の候補者や本人の判断能力の『調査』
成年後見等の開始の申立書が提出されると,家庭裁判所は,適正な審判のための『調査』として,職員(家庭裁判所調査官など)を本人や後見人等の候補者に面談させるなどして,申立ての実情や意見などを直接聞くことがあります。加えて,本人の判断能力についても申立て時にすでに明らかな場合を除き,原則的には,精神科専門医による診断や精神保健指定医による鑑定を実施するとしております。
本人の判断能力の調査方法は当該家庭裁判所の指示に従います。
*利用までのながれ(3/3)*
≫≫≫ 家庭裁判所の『審判』・『後見登記』,成年後見人の『初回報告』
前段(2/3)の結果などを踏まえて家庭裁判所は審理を行い,『審判』で「開始」または「却下」のいずれかを判断(決定)します。
また,成年後見の審判では,申立てと決定で成年後見の類型が異なる場合があるので,ご本人のほか,親族や関係者は,多少認識しておく必要があります。
つぎに,審判が確定すると当該家庭裁判所から東京法務局に『後見登記』が嘱託され,成年後見人等は審判の日から約1か月の経過で,当事者の住所・権限が記載された「登記事項証明書」の請求・入手が可能となり,成年後見人はこれの本人関係者への提示・提出をもって本人代理などの後見活動を行います。
最後に,成年後見人等の初仕事となる『初回報告』を,審判の日から約2か月までに家庭裁判所に提出します。内容としては「財産目録」,「年間収支予定表」および「関係資料等」となります。
以降,家庭裁判所には,監督を受けるための『後見等事務報告』として,指定期日(1年ごと)までに財産目録と併せて提出する「定期報告」と,財産処分などの事象に応じて提出する「随時報告」を行いながら,後見業務を遂行します。
以上が【利用までのながれ】の概説です。
*サービスの内容と料金*
≫≫≫ サービスの内容
後見人,保佐人または補助人(併せて後見人等といいます)が行うサービスは「財産管理」と「身上保護」に分けて考えられております。
「財産管理」では、預貯金の管理のほか,本人の法律行為の支援として行われることが多く,後見人の場合で「代理」,保佐人や補助人では「同意・追認・取消し」がその内容となります。
書面をもって行われることが多く,後見人等は「成年被後見人〇〇 〇〇の成年後見人▢▢ ▢▢ ㊞」のように記載して本人が担うべき社会的役割を支援します。
他方「身上保護」では,本人の意思や個性,おかれた状況を十分調査検討して,居住施設や介護サービスの選択を行います。
また,本人の心身状態や周辺状況の変化にすみやかに対応するため,定期若しくは随時に面談や関係者への聞き取りを行います。
≫≫≫ 料金(報酬)
成年後見人等の任務である「後見事務」には,サービスの料金にあたる報酬の請求が認められております。
通常,年一回の定期報告である「後見事務報告」と併せて「報酬付与申立書」を監督する家庭裁判所に提出し,報酬額が決定されます。
報酬額は,本人の財産や収入を考慮して決められ,親族以外の,法律や福祉の専門職の場合で,月額2万円程度の例が多く,本人資産が5千万円を超える場合などでは,月額報酬が5万円とされることもあります。
一方,同居の親族が後見人となって報酬を求めた場合,専門職と比較して低額になることが多いようです。